僕はプロフィールにも書いておりますが、師匠がおります。
ジャズという音楽ができるようになりたいけれど、雲を掴むようでございまして、何をどうしたらよいのだ!と悪戦苦闘しておりました。
そこで誰かに習いたいと思い、よく分かんないけどなんかすごいドラマーと思っていた師匠に教えてもらおうと思いました。
そして先輩に相談し、あの人に教えてもらいたいのですがどうすれば?と聞くと
「ライブに行って、教えてって言えばいいんじゃない?」
と。
超強力なプロの人にそんな押しかけでいいのーーー!
と、大分の田舎者はビビりまくり。
その噂を聞きつけた友達はこの日ライブやってるよと、日程を指定してくる始末。
「お前はプロになりたいんだろう」と自分に言い聞かせながら、ド緊張してライブに行きました。
しかもその日は噂で超厳しいと聞いているベースの方と一緒に演奏されてて、「わーい!怖さ倍増じゃなーい!」と泣きそうでしたが、演奏が終わったあと震えながら、「ドラムを教えていただけませんか?」と聞きました。
その時の師匠の
「やるか?」
という、やさしい笑顔は本当にステキで、緊張の度合いがそのままうれしさに入れ替わって有頂天で帰りました。
さて、そこで師匠に弟子入りをした僕は何をするかというと、一般的にぼうや(ローディー)と呼ばれているお手伝いです。
師匠の家に行き、車で現場に向かい、セットを下ろし、組み立てるです!
あとは、ちょっとした買い物をすることがたまにある程度で基本片付けまで、演奏やリハを見させてもらえます。
本当に幸せでした。
車の中ではいろいろ質問ができますし、リハの仕方なども見れますし、共演者もバラバラですのでいろんなアプローチの師匠を見ることができました。
「ぬおーー!これが師匠から盗むというやつかーー!」
と、修行大好き坪井は喜々として毎回行っておりました。
そして、月に一回はスタジオで僕のドラムを見てくださり、具体的なアドバイスも聞けるというなんてステキな日々だったでしょうか。
僕は失敗もあり、よく覚えているのは田舎者には銀座というとこがどんなとこか知らず、ざっくばらんなジャズのお店と思い、ハーフパンツで行ったら、すっごい高級なお店!
あわあわしていたら、師匠が
「よし、これからぼうやのときは半ズボンは禁止にしよう」
と、笑って言ってくれました。
そして師匠は本番で登場しドラムに座った瞬間、ジャケットを脱ぎ、似顔絵みたいなタッチで大きく描かれているマイケル・ジョーダンのTシャツ姿にいきなりなったときは、
「ジャケット、意味ないじゃないすか!さすがっす!」
と感動しました。
僕は師匠が本当に大好きなのですが、たくさんの教えてもらったことで二つだけ。
一つは、演奏が成長していくには「聴く」力がとても大事だと教えてくれました。
演奏技術でもなく、聴くこと。
聴ければ何をすればよいかわかる。
聴こえるものの違いで意味が違ってくることなども教えてくださいました。
「俺はお前の聴こえる100倍聴こえてる」
という言葉には、おっしゃる通りっすと感服いたしました。
もう一つは
「自分のソロも叩けねえくせに、コンピングができるわけねえだろうが」
です。
コンピングというのはざっくばらんに言うと伴奏です。
普通は伴奏の方が簡単で、自分のソロの方が難しい!ですよね。
でもちゃんと自分の歌がまず歌えないと他の人の歌の理解なんてもっての外。
相手の歌を聴きつつ自分の歌を交えて音楽をよりふくよかにしてくのですから、そりゃそうっすよね。
この二つは私生活でもすごく役に立つ代表でありました。
こんな大好きな師匠のもとを離れるときは、僕が一度音楽をやめようと思った時でした。
師匠に音楽を一度離れていろいろ見てみたいと思いますと話したとき
「一つのことを目指す時にいろいろ考えずに進めるやつもいるけど、いろいろ考えてそれに向き合うやつもいるよ。
お前は考えるやつだもんね、いいことだよ」
と、おっしゃりました。
僕はいろんな思いが溢れ、涙ながらに
「音楽好きっす」
と漏れ出ると、師匠がやさしく
「知ってるよ」
と。
師匠大好きっす。
「お前はソフト(頭の中)ばっかり進んで、ハード(技術)が全然追いついてない」
というのはまだそうですが、いろいろ遠回りをしながらも何とか音楽家としてやっております。
帰国後、ビクビクしながら会いに行きましたが、タイミング悪く会えませんでした。
師匠、また会いに行きます。